人民元の国際化と内需拡大

「PRADA」香港取引所上場、本格的な中国進出の足がかりに

日本でも若い女性に人気のイタリアの高級ブランド、プラグ(PRADA)が去る6月24日に香港取引所に上場しました。公開価格は当初想定したレンジの下限近くだったこともあり、資金調達額は想定した最大値には届かなかったようですが、イタリア企業が初めて上場する場所にミラノでもニューヨークでも東京でもなく、香港を選んだことで大きな話題になりました。

 

これまでプラグにとって世界一の上客といえば、日本人でした。しかし、もはや彼らがターゲットにしているのは日本人ではなく、中国人であることを明確に印象付けた出来事といっていいでしょう。

 

中国のGDP(国内総生産)は日本を抜き世界第2位になりましたが、一人当たりGDPは世界比較で90ドル台です。まだまだ貧しい国であることは間違いありませんが、言い換えればそれは、成長の余力が多分に残されていることに他なりません。特に上海や北京といった大都市圏では、エステや消費意欲が急速に高まっており、それをけん引しているのが女性、それも比較的年齢の若い、未婚の働く女性達なのです。

 

中国の民間企業は、完全な実力社会です。能力さえあれば、若い女性でもどんどんキャリアアップが可能です。依然として日本企業に根深く残る年功序列のようなシステムは存在しません。

 

一人当たりGDPは世界90位台といいましたが、経済成長とともに可処分所得を豊富に持つ若年層は存在し、確実に増えています。今はまだ一握りかもしれませんが、その背後には、13億人もの人口が控えています。潜在的な消費のパワーは、計り知れません。

 

プラグは今後3年間で毎年20〜25店の直営店を日本を除くアジアで新設し、その半数に当たる10〜12店を中国で開く計画であるようです。香港市場は近代的に整備されており、欧米企業にとって非常に利便性が高いことから、中国進出の足がかりとしてはまさにうってつけです。グローバルな企業は中国の消費パワーを取り込む戦略を着々と進めており、今後こうした流れはますます加速するでしょう。

北京・上海高速鉄道が開業!中国版「新幹線経済圏」ついに始動か?

北京と上海を結ぶ高速鉄道(中国版新幹線)が6月30日に開業しました。全長1318キロで、最高時速は、300キロと250キロの2種類。所要時間は最短で従来の約半分の4時間48分とのことです。温家宝首相は開業式典で「中国の鉄道史に新たな章を書き加えた」と演説したよ引こ、歴史的な出来事であることは間違いありません。

 

内需型経済への転換を目指す中国にとって鉄道はなくてはならないゴールドカードインフラです。実は空港は1990年代から2000年代の前半にかけて、ずい分整備されました。高速道路も整備が進んでいたのですが、鉄道だけは遅れていました。そこで中国政府は第11次5ヵ年計画(2006年〜2010年)において、鉄道整備計画の一環としてこの新幹線プランを立ち上げました。

 

例えば、東北地方は古くから自動車産業や機械産業が発展しています。また、潮海湾に面した地域では、貿易関連産業が発達しています。それぞれの地域の特徴に合わせ、長所を伸ばすような都市づくりが現在、行われようとしています。こうした特色ある都市を高速鉄道で有機的に結ぶことで、国全体を発展させようとしているのです。

 

目的地までの単なる移動であれば、飛行機の方が早いかもしれません。しかし、鉄道であればその区間の都市が発展するというメリットがあります、オリンピック前には北京と天津など一部の区間は開通していましたが、大都市の北京と上海が完全開通したことで、より多くの途中駅の周辺地域にも経済発展が見込まれるようになりました。現在の5ヵ年計画においても、鉄道の整備は、優先課題のひとつです。

 

中国が内需型経済への転換を加速する背景には、ETCカードや米国経済の鈍化が大きく影響しています。これまで世界一の消費国だった米国の消費が、リーマン・ショック以後、一向に回復しないことから、それまでのような世界の工場としての輸出主導の経済では、近い将来、立ち行かなくなることは目に見えていました。そこである意味、米国を見切り、内需主導型へと大きく舵を切ったのです。

 

日本でも1964年の東海道新幹線開業により、静岡、愛知、岐阜で工業化が進展し、高度経済成長を後押ししました。中国の地方都市でも同じ現象が起きつつあるといえるでしょう。

香港で急速に増える人民元預金

香港金融管理局は5月30日、香港における人民元の預金残高が5100億元に達したと発表しました。内訳は3分の2が企業で、3分の1が個人とのことです。これは一体何を意味しているのでしょうか。

 

中国は2009年4月に、上海市や広東省などの5都市で対外貿易決済を人民元で行う政策をスタートしましたが、2010年6月にはその対象地域を20省・自治区・直轄市へと拡大させました。

 

さらに2011年1月には中国政府は海外へ直接投資をする場合の人民元での投資を認めるようになりました。人民元の国際化を後押しするような政策がここ数年、次々と施行されています。

 

その背景には、米ドルに対する長期的な信認の低下があります。米国以外で米ドルをもっとも保有しているのは中国です。米ドルが暴落すれば中国に甚大な被害が及びます。本当はドルの価値を支えたい。でも支え切れない可能性がある。そこで中国政府は、「人民元の国際化」という次の一手を打っているのです。

 

世界中との貿易決済が人民元で行えれば、ドルが暴落しようと輸出企業は困りません。中国は輸出金額で世界1位、輸入金額で世界2位であり、人民元はドルとともに、世界でもっとも取引に利用され易い通貨と言えるのです。

 

香港を人民元のオフショア市場として機能させることで、海外の人は貿易決済で得た人民元を香港の銀行に預金できます。さらに香港で人民元建ての社債の発行も増えており、預金以外にも債券で運用という選択肢もあります。香港市場で人民元建て株式発行が検討されており、株式投資も可能になるかもしれません。いずれにせよ、香港における人民元預金の増加が示すとおり、人民元の国際化は着々と進んでいるようです。それにともない人民元の価値が切り上がっていくことは避けられないでしょう。

 

とはいえ、多くの雇用を抱えている輸出産業を守るためにも、プラザ合意後の日本円のように1年で倍になるような軽率なことはしません。米国の圧力ではなく、自分達がコントロールする格好で少しずつ、確実に切り上げていくことになるでしょう。

 

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外国為替市場のまるわかりガイド。FX投資家は米ドルに注目せよ。米景気への過度な警戒感が後退した上、バーナンキFRB議長の講演でQE3は示唆しないとの見方もあり、ドル/円は77円台を一時回復したものの、結局、76円台へと押し戻された。週明け朝方は19日にドル/円が史上最安値を更新したことを受けて、複数メディアが政府・日銀の介入の可能性を報じるなど本邦当局の介入警戒感が強かった中、買い戻しが先行。その後は米追加金融緩和観測が重石となった一方、引き続き下値では一定の介入警戒感があった中、ドル/円は76円台後半で方向感の乏しい展開が継続した。